ぐらんぴ日記

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小栗風葉の没落


明治の文学史に興味のないかたはスルーしてください。

以前、目白の「のぞき坂」で書いたのですが、小栗風葉(ふうよう)と真山青果(せいか)師弟が「憤懣」を抱いていたという話。
安達Oさんが憤懣の理由を問われたのだけど、その時のぼくはよく分からなくて、「単なる酒乱、破滅型人間だったのでは」と書きました。まずは↓を。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=786226394&owner_id=170858

『盗作の文学史』にちょうど小栗風葉と真山青果のエピソードが出てきたので、「ああ、なるほど」と思いました。

>硯友社の作風をもっとも継ぎ、紅葉没後『終編金色夜叉』を書いた小栗風葉は、しぶとく生き延びた秋聲とはうらはらに、自然主義に圧され文壇から排除されたが、代作問題もその一因として働いていた。

明治も二十年代、三十年代中期までは有名な作家が弟子に作品を書かせて、つまり代作させるというのは日常茶飯のことだったようです。しかし「作品は作家その人の魂の叫び」という西欧世界での文学観が伝わると、代作では作家と読者の間にきっちりした絆が作れません。ですから代作を許す作家は厭われるようになり、没落してゆきました。弟子の真山青果や中村武羅夫に代作させていた風葉は、結局時代の波によって排除されていったんですね。

>風葉は、明治三十八年(1905)の長編『青春』により、数えで三十二歳という若さで文壇の寵児になったが急速に没落した。(中略)
大東(おおひがし)和重『文学の誕生』は『青春』発表後、明治三十九年に絶頂をきわめた風葉が、四十年なかごろには一転、否定的な色に包まれだし、四十二年あたりでほぼ完全に駄目作家の烙印を押されるまでを、当時の新聞や文芸誌における作家や評論家の言説を丹念につなぐことであぶりだしていて興味深い。(中略)
大東はしかし、自然主義的文学観の蔓延だけではなく、そこに代作問題が重なったことが、風葉の没落を決定づけたのではないかとみる。(中略)(代作問題は)三十九年の後半以降、本格的に問題視されるようになったという。なかでも風葉はこぞって槍玉に挙げられた。(中略)
クレジットされた作者と実際に執筆した者がとがが一致しない代作は、風葉という作家を文学史から「倫理的」に葬り去るモーメントとして働いたわけだ。


風葉と弟子の真山青果らが戸塚の風葉邸でくだを巻いて夜な夜な飲んで騒いでいた時、彼らはそういう圧力を受けていたのですね。つかの間の人気のあと、急速に襲ってきた落魄。これまで許されてきたことが許されなくなった。彼らが抱いた憤懣とは、「代作を許さない」という文壇に対する憤懣だったのですね。「じゃあ代作をやめてそれぞれがちゃんと自分の名で作品を発表すればいい」と思うでしょうが、風葉はもはやその才能が枯渇していたのでしょう。ですから『金色夜叉』の続編を紅葉一門には挨拶もなく書いて新潮社から原稿料をもらうと、共依存関係にあった真山青果を振り捨て郷里に帰って引退してしまうわけです。まだ三十代で世の中から見捨てられる――これにまさる屈託鬱屈というものもないでしょう。

代作者として師に依存していた真山青果は、それ以前に「原稿二重売り」事件を起こして文壇を追放された形となっていて、風葉の代作者として糧を得ていたわけです。文壇の「代作許すまじ」という圧力は、ついに師を押し潰し、青果は文筆で食うことを諦めるしかありませんでした。
雌伏のときを経て青果が歌舞伎脚本家として再起するのは、長い年月を経てのことでした。

「のぞき坂」を取っ組みあって転がり落ちた風葉・青果の師弟が抱いていた憤懣とやるせない思いとは、つまるところそういうものだったのですね。

(写真は小栗風葉)
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官能作家・館淳一。趣味は路上観察、雑学研究からセーラー服ウォッチング、美女装子探しまで、なんでも探索。
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