ぐらんぴ日記

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『人間豹』56年後の邂逅(2)




(前の(1)より続く)

このたび「発見」してくださった浜田さんは、乱歩研究者として、書籍だけでなく、乱歩作品を掲載している雑誌なども蒐集しているようで、『少年少女 譚海』もコレクションのなかに何冊かお持ちらしいが、そのなかに『人間豹』が連載されいるものは無かったらしい。これぐらい古い雑誌となると国会図書館にも納められていないので(まだ納本制度が無かった?)、とにかく古書市場に出るのを気長に待つしか方途がない。

時々「また『譚海』が見つかった。今度はそうかも」という報が黒田さん経由で入って「おー、そうだといいが」とワクワクして待ってると「やっぱりダメでした」ということになる。期待、不安、落胆の連続で、最後はもう諦めの境地となった。「あるいは雑誌の名前を間違えて記憶していたのではないか」とさえ思うようになった(さすがに絵柄が幻だとは思わなかったが)。

そうしたらついに「今度こそ館さんの見た挿絵です!」という連絡があり、しばらくしてコピーが送られてきた。どうやら赤インクで印刷されているページのようで、それをモノクロコピーしたのでやや不鮮明なところもあるが、絵柄はハッキリ見てとれる。

「おお、これだ!」

あのセーラー服美少女ちゃんと描かれていた!

記憶と違うのは、セーラー服の破れ具合が少ないこと。もっと破れてスリップなんかが見えていたような気がしたのだが。
それは二枚目にあげた「黒いパンツ一枚」(原文のまま)にされたとされる部分の挿絵およびタイトルページの挿絵にわずかにシュミーズかスリップの残骸とおぼしき布切れがまとわりついているので、それがごっちゃになったのだろうと思われる。

文章部分はオリジナルもそうだが、このリライト作もいたって簡潔である。

《いつのまにか、豹のまえにひとりの少女が、かみをふりみだして、セーラー服はビリビリにちぎれ、かわいい乳房をプリプリふりながら、両手でなにかをふせぐかっこうをしてたおれていた。》
《かわいそうにひろ子は、ころがるたびに、なにもかもさけちぎれ、いまはもう黒いパンツ一枚だけになって、あらわな肌いちめん、かき傷とかすり傷がするどい血の縞をえがいていた。》


これだけの文章なのに、挿絵のおかげでぼくの想像力は極限までふくれあがって、美少女が豹(と人間豹)によってずたずたに食い殺される前の、猫に弄ばれる鼠のように、しだいに裸にされる情景を脳裏に刻み込まれ、いやおうなしに激しい性的興奮を覚えさせられたのだ。いけない人ですね、江戸川乱歩は。まったくもう。

しかしまあ、およそ56年たってからの巡り会いである。
掲載誌は『少年少女 譚海』の昭和27年(1952年)10月号。江戸川乱歩原作の『人間豹』第二回である。(この時の発行所は文京出版。同誌は廃刊まで3度出版社名が変わっている)

これを読んでゆくと、オリジナルでは銀座のカフェ・アフロディテのウエイトレス、つまりホステスだった「弘子」は、同じ銀座のキャバレー『黒百合』に花を売りにくる娘(つまり花売り娘)「ひろ子」とされている。
主人公はオリジナルでは会社員となっているが、こちらではキャバレーの少年ボーイに置き換えられている。つまり全体に「時代を戦後とし、少年向けに」改作されているわけだ。
このリライトは乱歩本人ではない。あらかじめ「原作」と打ってあるのは、改作者がいるという意味で、その人物の名は連載の末尾にちゃんと記されている。「武田武彦」

この人の名は寡聞にして知らなかったのだが、戦後日本のミステリ界ではよく知られた人のようだ。ちゃんと Wikipedia にも項目がたっており、「江戸川乱歩の作品を少年向けにリライトしたことでも知られる」とある。周知の人だったわけだ。
挿絵を描いたのは成瀬一富(かずとみ)。この人も戦後雑誌界で挿絵の売れっ子として名を馳せた人のようだ。リライター、挿絵、いずれも当代一流の人を起用しての連載ということになる。

――というわけで、いろんな人の協力のおかげで、ようやく「人間豹に襲われるセーラー服美少女」と、なんと56年ぐらいあとに巡りあえたわけだ。
人生、こういうこともあるのだ。

改めて関係の諸氏、とりわけマイミク黒田さんに感謝の意を表するものであります。


――しかし、読み直してみて、
(1)よくもこんな残酷な内容の「大人向け」作品を少年向けにリライトしたもんだなあ。
という強引さに驚く。何せ、ひろ子ちゃんは最後は食われて血まみれの肉片になってしまうんだから。(不思議なことにその部分は記憶にない。後年、『人間豹』オリジナルを読み直して、「ひええ、こんな恐ろしい物語だったか」と驚いたものだ)
(2)ひらがながやたら多く、漢字の使用は最低限。つまり小学生でも何なく読める文章にされている。
ことにも驚く。その頃は『譚海』って、何か小学生(当時5、6年生)には難しい雑誌というイメージがあったのだが。
そして、
(3)
挿絵がなんといってもエロすぎる!

ノーブラの「かわいい乳房がプリプリ」をちゃんと絵にしてるんだからねえ。今の少年少女雑誌でもこれぐらいはふつうにあるだろうか。
でも殺されちゃうんだからね、よく父兄からの苦情が来なかったもんだ。

まあ、このあとすぐ、ぼくは親の持っている乱歩本『屋根裏の散歩者』『芋虫』『闇に蠢く』『湖畔亭事件』なんかを読み耽って、決定的に変態になっちまうんであるが、このセーラー服ひろ子ちゃんがその第一歩ということなるんだろう。
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官能作家・館淳一。趣味は路上観察、雑学研究からセーラー服ウォッチング、美女装子探しまで、なんでも探索。
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