ぐらんぴ日記

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吉田健一あれこれ


麻生太郎は吉田茂の孫であり、共に政治家であるが、強烈な個性を発揮して戦後日本を復興に導いた祖父と漢字の読めない孫の間には何の類似点も感じられない。
しかし一つだけあるかな、と思われたのは「総裁の椅子」である。
鳩山一郎(奇しくも孫が鳩山由紀夫である)は戦後、自由党総裁として最初の選挙で第一党となったのに、GHQによって公職追放される。そこで鳩山は盟友の吉田茂に総裁の座を譲り、この時吉田は「公職追放が解けたら即刻、君に総裁の座を返す」と約束したんである。
ところが公職追放が解けて政界に復帰した鳩山一郎が吉田に「返せ」というと「返せん。もう少し待て」と言うばかりで首相の座に居座り続けた。この時の「首相の椅子に座り続けた」ことが似てるといえば似てる、かもしれない。まあ事情はだいぶ違ったのだけれども。
怒った鳩山一郎は「この裏切りものめ」とばかり吉田を倒す側に回ったので、吉田茂はさんざん悩まされた。これが因縁の吉田鳩山戦争である。
まあこの時の鳩山の公職追放は、ぼくも納得がゆかない。だいたい大政翼賛体制に抵抗した反軍部反軍国の人だった。マッカーサーがほとんど因縁つけたとしか言いようがない。
この鳩山一郎がようやく吉田から自由党を奪って保守合同をやってのけ「55年体制」を築いた。
その孫の由紀夫が、50数年後に祖父の作った体制をぶっこわしたのである。これも何かの因縁と思わざるをえない。

さてバカ孫フロッピー麻生の伯父さんに吉田健一がいる。彼のお母さん和子さんの兄にあたる。早く言えば吉田茂の長男である。
知らない人はここを読んでないと思うから説明しない。英米文学者である。
外交官の祖父(牧野伸顕)や父に連れられて欧州各国を巡り、イギリスはケンブリッジに留学した。『ブライヅヘッドふたたび』に解説を書いているとおり、イギリスのこと特に貴族階級のことにはえらく詳しい。なにせそういう中で生活してきたからね。日本にシエイクスピア劇団が来日した時、その稽古をみて「おまえたちの英語はおかしい」と叱ったというエピソードがある。シェイクスピア研究の権威でもあった。

この健一氏はぼくが神保町の出版社づとめを始めた頃、ビアホール『ランチョン』の常連客として有名だった。毎週水曜日、午後になると入り口を入って右側のテーブルが健一氏の定席で、そこに悠然と座ってパイプをふかしていた。「あれが吉田健一か、すげー」とぼくらはおそれいって眺めていたのだが、なぜ彼が毎週水曜、その席にいるのかは知らなかった。
最近になってようやく分かった。

この高名な文学者は電話をもたなかったのである。

それで『ランチョン』を連絡場所としていたんであるね。彼に用事のある編集者記者は、水曜の午後、ここに来れば彼に会えたので、そこでいろいろな用件を果たすことができた。
戦後高度成長時代のことである。電話の一本が持てないはずがない。信条としてもたなかったんだろうね。

おやじも相当頑固な人であったが、この長男もそうとう頑固であった。
政治に目もくれなかったのはともかく、父親との折り合いはそうとう悪かった。一説には実母(牧野伸顕の娘)を失ったあと、父親が新橋の芸妓小りんを家に入れたためとも言われている(小りんは後に正妻となる)。妹の和子、つまりフロッピー首相の母親とも不仲で、父親の死後はほとんど顔を会わせなかったようだ。
ある時、言うことをきかない息子に頭にきた吉田茂は、「勘当だ!」と息子を家から追放してしまった。親も親なら息子も息子。
「勘当された。食ってゆけん」
そう言って何をしたかというと「乞食」になったんである。
それも銀座のど真ん中、当時本社があった文藝春秋社の玄関前で。

これには文春の社員も驚いた。朝行くと時の宰相の息子が社の玄関前に座りこんで目の前に空き缶か何かを置いて乞食をやってる。
その時、一番最初に彼に金を恵んだ、と言われているのが志賀直哉だそうだ。
なに、食えないわけがない。親に対する反抗姿勢を見せただけである。いやがらせだね。父親だって「息子が銀座で乞食をしてる」と言われたらたまったもんではない。どういうふうに解決したかは知らないが、まあ解決したんだろうね。金をくれてやったのだろう。

このあたり、都市伝説が少しばかり入ってるかもしれないが、勘当の一件は本当である。
とにかく、大変な親子であったことは確かである。こんな面白い親と子の確執、ちゃんと本か何かになってるのだろうか。
しかし漢字もロクに読めない甥のことを、もし健一が生きていたら、この一代の教養人はどう思っただろうかねえ。
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官能作家・館淳一。趣味は路上観察、雑学研究からセーラー服ウォッチング、美女装子探しまで、なんでも探索。
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