ぐらんぴ日記

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永井永光氏逝去 2012年05月27日

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これは迂闊だった。
荷風の養子、相続人の永井永光(ひさみつ)氏が亡くなられていた。
知ったのは市川市のホームページ。

http://www.ichiyomi.co.jp/oriori/2012ori.html

荷風が最晩年を過ごした市川市では、ずいぶん荷風についての資料を集め展示し、イベントも行なってきている。港区も見習ってほしいものだが、市のホームページでも荷風関係の情報がよく流される。気づくのが遅かったが、4月25日に肺ガンで亡くなっていたのだ。

永光氏は荷風の従弟、大島一雄(邦楽家杵屋五叟)の次男で、昭和19年、相続人がいないことを懸念した荷風が望んで養子とした。
しかしほとんど「父と子」という関係ではなかった。終戦後、市川市に転居した大島一雄の家に間借りした時、一年半余をひとつ屋根の下で過ごしたに過ぎない。しかも直後に、「この養子関係を破棄したい」と荷風が言い、裁判してまで争おうとした。
養父としては冷たい限りの荷風であったが、永光氏は「荷風の相続人」という立場を遵守し、市川市真間の荷風の家に住み、遺品その他を保管してきた。
戦後は銀座に『偏喜館』というバーを営み、その経営者として数年前までカウンターのなかに居た。
結局、荷風と同じ79歳という年齢で、荷風の命日(4月29日)に近い日に亡くなった。断腸亭日乗原本を含め、荷風の遺品は頑丈な金庫に保管され今なお散逸せずに残っているのは、永光氏の努力によるところが多い。
これらの遺品は、たぶん子息の壮一郎氏が相続することになるだろう。私は遺品にはそれほど関心はないが、ひとつだけ多いに気になるものがある。
遺稿となっている『濡れズロ草紙』の原本である。
荷風は最晩年、戦争未亡人を主人公としたポルノ小説を執筆し、それに『濡れズロ草紙』と名付けた。戦後は性的表現がおおいに緩和されたので、発表もできると考えたのではないだろうか。しかしGHQ(占領軍総司令部)の検閲はなお厳しく、地下出版でもなければ不可能と分かり、公表は断念されたと思われる。
これを読んだ人は、荷風研究者やごく近しい知己数人だけと思われる。
『四畳半襖の下張り』がすでに完全復刻されて刊行されている現在、この伝説のポルノ小説の刊行を妨げる要因は無いと思われるが、永光氏は概要と遺稿の表紙を発表するだけで、全文の公表を固く拒んできた(おそらく多くの出版社から要請があったと思うが)。
つまり永光氏は、この内容が「荷風の威信を傷つける」と危惧したものらしい。まあ戦争未亡人が娼婦となり米兵(黒人もいる)と交歓するような内容もあるらしいから、かなり過激なハードポルノのようだ。永光氏は養父が「こんなワイセツなものを描いて」と批難されるのを怖れたのだろう
その気持ちは分るのだが、世の荷風ファンにとっては、これはぜひ読んでみたいものだ。なに今どきのポルノ小説に比べたらどうということはありませんって。(^_^;)
さて、『濡れズロ草紙』はどうなるのか。相続人はやはり封印し続けるのだろうか。

永光氏が荷風との思い出を記した『父・荷風』(白水社)の表紙は、亡友・松本哉君が描いたイラストを用いている。荷風研究に没頭した哉君は銀座の『偏喜館』も訪ね、いろいろ取材して永光氏と親しかった。その関係であろう。
元気な時は私を永光氏に紹介してくれると言っていたが「また銀座で飲みたい」と言いながら闘病の末亡くなった。『偏喜館』で共に飲むという夢はかなわなかった。会ったら永光氏にぜひ『濡れズロ草紙』を拝ませてもらおうと頼むつもりだったが。
合掌。
コメント
イイネ!(1) かおる姫
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退会したユーザー2012年05月27日 13:17
内容云々の前に、題名がストレートすぎて公表を躊躇されたのだとか。濡れズロはエログロの語感を意識したのかもというのは考えすぎでしょうか。この題名を拝借して「濡れパン物語」を書こうかなと思いました。
ぐらんぴ2012年05月27日 13:30
新潮社とんぼの本『永井荷風ひとり暮しの贅沢』に、永光氏は『濡れズロ草紙』(ぬれずろ草紙)のかなり詳しい内容を、抜粋した原文とともに紹介していますが、完全な公開をさし控える理由は記していません。ただ「この公開には私なりの考えがあっての一回きりの体験だった。これよりのちは一切これを公けにするつもりはない」と結ばれています。永光氏自身はこの作品の貴重さは理解しているようなのですがね。研究者は最晩年に発表された短編がひどく未完成な理由を不思議がっていますが、どうやらすべては「濡れずろ草紙」と組み合わせて、一編の長篇になるような仕掛けだったと思われます。だとすると最晩年の荷風短編の秘密をさぐるにも、この濡れズロ草紙の公刊は必要不可欠なんですがねえ。どうも新潮社が強力に根回ししているようなので、壮一郎氏の考えによっては刊行される可能性があるかもしれません。
ぐらんぴ2012年05月29日 18:58
facebook では同じコンテンツを投稿しても、一定の反応を得られるんだけど、mixiはほとんど反応が得られない。その対比が二つのSNSの特徴なんだろうか。ちなみにマイミクと友達の数はほぼ同じ。
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官能作家・館淳一。趣味は路上観察、雑学研究からセーラー服ウォッチング、美女装子探しまで、なんでも探索。
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