ぐらんぴ日記

mixi上で「ぐらんぴ」が書いている日記の引っ越し版です。文字サイズ変更できます。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

こんな言ひ方をご存知でせうか? 2012年03月13日

猫だって夢を見る


「やあ、ようやく見つけた!」
丸谷才一のエッセイ集『猫だって夢を見る』(文藝春秋、89/10)の、『彼らの尊王』といふエッセイを読んでいて、うれしくなつた。
イギリス国王エドワード七世の愛人、リリー・エントリーのことについていろいろ考察してゐる文章。
エドワード七世といふのは、ほら、シンプソン夫人との「世紀の恋」で王冠を捨てたエドワード八世のお祖父さんにあたる国王。
イギリス国王や皇太子といふのは、夫人のほかに愛人を持つのが当然でした。伝統といふか。エドワード八世にしても皇太子時代に3人の愛人がゐました。みな人妻。そこにシンプソン夫人が最後の愛人として割り込んできたわけです。
ここがイギリスやフランスの面白いところで、人妻と国王とのダブル不倫というのを、その夫も含めてみな寛容に認めてゐるんですね。誰も非難しない。皇后や皇太子妃も怒らない。
まあ、さういう奇妙な風習を丸谷才一は面白おかしく書いてゐるんです。

エドワード七世が皇太子時代に愛人にしたリリー・レントリーといふのは。イギリス社交界で大変な美人と才気の持ち主として有名になつた人妻です。どちらかといふとパツとしない家系の娘なんですが、ちやうど写真の普及した時代だつたので、その美貌が写真、いわゆるブロマイド写真によつて広く頒布された結果、スターアイドルみたいになつてしまつた。まあ笠森お仙(つて、誰も知らないだらうが)。
そして美女には目のないプリンス・オブ・ウエールズ時代のアルバート皇太子、後のエドワード七世が目をつけて、「ジャージーの百合」リリー・レントリーを愛人(ミストレス)にしてしまうわけです。
ここで面白いのが、「午後の訪問」ってやつ。
王様にしろ皇太子にしろ、愛人とデートするのに特別な場所を必要としないんですね。
単に「いついつの午後、そちらへ伺う」と愛人の人妻宅に連絡するんです。さうすると人妻の夫はその日の午後、家を留守にするんです。ゴルフに行くとか乗馬するとかクラブへ行くとかするんでせうね。
さて皇太子が邸に行くとメイドが待ち受けてゐてレントリー夫人の居室へプリンスをご案内。飲み物を出すともうメイドは絶対に戻りません。長い午後、プリンスは愛人の人妻と過ごして帰つてゆくんですね。きぬぎぬの別れは、この際「後朝」ではなく「後昼」になるわけだ。
かういふ逢引の仕方つて不思議でせう。夫がいる身なんだから、ふつう夫は怒る。でも彼は怒らない。王や皇太子との仲が冷えるまで「女房を皇太子に寝取られた夫」という身分に甘んじて過ごすんです。
国王や皇太子の愛人になつたとてすごいお金をもらえるわけではなく、特権は洋服屋に衣装代を払う必要がない、つてだけのことらしい。国政に口を出すこともない(ここらへんがフランスの、たとへばポンパドゥール夫人のやうな愛人とは違ふ)。
それでも女性は「国王の、皇太子の愛人」というオーラと名声がつきまとうわけです。第一級のセレブになる。女の勲章ですね。
問題は亭主のほう。夫は、どんなパーティでも宴会でも妻と一緒に出席する義務がある。たとへ愛人である国王、皇太子の催す宴席でも、正装して妻をエスコートしなきやならない。この時の夫の精神状態といふのはどういふものでせうかね。あるいは「国王、皇太子に目をかけられた美女の夫」といふことで箔がつくのかしら。
丸谷才一はそこらへんお事情をいろいろ考察するわけです。

えーと、ずいぶん枕が長くなつてしまつた。書き慣れない旧かな遣いといふのも疲れる。(笑)
さういふお話を読んでる途中、かういふ文章にぶち当たつたのです。

実は『ユリシーズ』はややこしい仕掛けでありまして、読んでるうちにアイルランドの上流階級の有名な姦通事件が読者の頭にちらつくやうになつてゐます。その姦通は、アイルランド政界の大立者パーネルが、彼の政党の代議士オシーの妻と慇懃を通じて訴えられた事件です。

この本は私は発売直後、二十年前ぐらいに買つて、その間、三回四回は読み返しているはずなんですが、今回、初めて気がつきました。

慇懃を通じて

こいつなんですよ、こいつ。(笑)
この言葉を探していたのです。
つづきはまた。


イイネ!(3) あやのすけ  みゆき(M1号)  きた
==============================
コメント

霞 2012年03月14日 00:08
例の長編は、「まあ、不倫のようなこと、それを反すうしているらしい」とは、おぼろに感じていましたが、ほんの一部でキブアップしてしまいましたので、さっぱりです。印象は光と白?

それにしても、王家の不倫にも堂々と心情がこもっていて。
「不倫は文化」みたいなもの。いまでは、しもじもが…。
日本の上流は、可哀そうな気がします。もっぱら不倫は「タネツケ」みたいで。それとも日本人は、「うそつき」なのか?

丸谷先生とは、新宿のお店などで、よくお見かけして、ご挨拶くらいはいたしましたけれど…。お難しい感じで。埴谷先生などのほうが、ずっと楽しくお話
させていただきました。まあ、昔の話ですが…。
コメント

霞 2012年03月14日 23:17
旧かな、わたし使えます。もう、いいかげんになってしまっていますけれど。
こうやって拝見すると、旧かなもなかなか趣があって、意外に優雅ですねえ。
コメント

ぐらんぴ 2012年03月15日 11:06
旧かなも時代時代で違いがあるやうですね。(笑)
「二条院」なんかも「にじゃういん」から「にでふいん」まで。
ここに書いたのは丸谷氏のパロディみたいなものですから丸谷流旧かな遣ひです。

霞 2012年03月17日 19:56
旧かな、とてもオモムキがあって、新かなよりずっと雰囲気を伝えてくれるのには、いまさらながら驚きました。
丸谷先生が、お使いになったワケがくっきりとわかりますね。
コメント


スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://jun1tate.blog25.fc2.com/tb.php/1964-bc8a383f

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

ぐらんぴ

Author:ぐらんぴ
官能作家・館淳一。趣味は路上観察、雑学研究からセーラー服ウォッチング、美女装子探しまで、なんでも探索。
館淳一ホームページ

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (1721)
飲食店 (6)
Mac (8)
電子書籍 (4)
mixi (4)
身辺雑記 (71)
美少女 (2)
セーラー服 (2)
ネット (3)
仕事 (10)
文学・小説 (12)
雑学(地名) (3)
出版・編集 (7)
雑学(死語) (5)
永井荷風 (6)
雑学(モノコト) (10)
事件(社会) (14)
事件(世界) (6)
政治 (1)
道具 (3)
回想 (11)
SM (2)
路上観察 (14)
女装 (6)
工作 (1)
ミュージック (7)
雑学(軍事・武器) (2)
アート・美術 (6)
原発 (7)
怪談・超常現象 (6)
病気 健康 (3)
ランジェリー (2)
夢 幻覚 (2)
映画 映像 (2)
料理 酒 (4)
日本語 (2)
植物 (13)
雑学(地理 地史) (3)
雑学(英語 外国語) (1)
芸能タレント (1)
鉄道 (1)
ゴシップ (2)
廃墟 (1)
建築物 家屋 (1)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

FC2Ad

Template by たけやん

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。