ぐらんぴ日記

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脳梗塞患者との意志疎通  2011年07月08日

脳梗塞で倒れると、
(1)声が出ない。
(2)四肢が自由に動かない。
こういう症状を呈する。
このため寝たきりで一見、痴呆のように見える。
ただし、
(1)目は見える。
(2)耳は聞こえる。
(3)判断力はある。
(4)意志疎通の欲求はある。
(5)頷く、首を横に振る。瞼を閉じたり開いたりできる。
これが脳幹部で梗塞が起きた患者に共通した症状である。
家族は、こういう状態にある患者と、どうやって意志の疎通を図るか、という問題に直面する。
諸姉諸兄にはいまのところ必要ない知識だろうけど、いずれ身内が脳梗塞で倒れる、あるいはあなた本人が倒れる時もあるだろうから、最低限のノウハウを伝えておきたい。
倒れた兄とは最初、家族はうまく意志を疎通させることが出来なかった。
頷いたり首を振ったりできるのだから、yes か no かは問えるのである。ただしそれでは本人からの意思を伝えることはできない。
イエスかノーか方式では、本人の思考意思をつきとめるためには看護する人間が無数の質問を発しなければならず、これを肯定したり否定したりする患者側もひどくエネルギーを消耗する。

そこで病院が用意してくれるのが五十音表である。
この五十音表のどこかの文字を示して「これ?」と質問してyes の反応を得られれば、ともかく、言いたいことの最初の一文字は分るわけである。
たとえば「どこか痛い?」と聞いてみて肯定なら、次は五十音表を見せて「ア行?」と問う。否定なら「カ行?」と訊いてゆき、肯定なら「カ? キ? ク? ケ? コ?」と訊いてゆく。どこかで肯定があれば、それが言いたいことの第一文字である。それがもし「コ」であれば、「腰が痛い?」と訊いて、肯定なら彼の伝えたいこと「腰が痛い」ということが分る。
五十音表は、その点では最低限の意思の疎通が図れるツールとして有効である。そしてどの病院でも五十音表は用意してある。
ただ、用意されてないのは「使いかた」である。ソフトウエアである。兄の担当医もそれを心得ていなかった。
三文字ぐらいまではいいが、四文字、五文字となると、五十音表だけではダメなのである。同じ単純作業の繰り返しで、患者の疲労も高まるし、質問者のいらだちも増す。先走りが増える。予測変換をしすぎるのである。「こ」が分ったからといっても「腰」とは限らない。「骨盤」と言いたいかもしれないのだ。

私は当初、次兄とのコミュニケーションにさんざん悩んだあと、ふと閃いて、画用紙とマジックインクを用意することにした。
私が考えついたやりかたはこうである。

(1)画用紙にマル、あるいは四角形を描く。
これはワープロでいえば「入力枠」である。
この枠内を示して「ここに入れる文字を言ってみて」と訊き、五十音表で選ばせる。候補の選定である。
(2)ここで「お」を選んだら、枠内にそれを薄く書き、「これでいい?」と確認する。否定したらどこかで間違えているので消してやり直し。肯定したら、その文字を枠内に黒々としっかりと書く。ワープロでいえば候補の確定である。
(3)確定した文字の下(または横)にまた枠を描く。「お、の次の文字を言って」と五十音表で選んでもらう。それが分ったら枠内に描き、確認する。
常に「これでいい?」と確認する必要がある。つい先走りしたいが勝手な予測は控えること。
(4)二文字目が「こ」だと画用紙には「おこ」という二文字が並ぶ。「お。こ。でいい?」と確認をとっったうえで、そこで三文字めの枠を描き、五十音表から選ばせる。
……こうやって「枠を示す」「文字を選ぶ」「選んだ文字を前の文字に連ねて表記してゆく」……という手順を重ねてゆくと、だんだん言葉になってゆく。
この時重要なのは、

今まで選んで確定した文字列を常に示しておく。

患者は文字数が増えると、前に発した言葉がなんだったか忘れてしまうことが多い。また「何を言おうとしてたんだっけ」ということもある。それまでの結果を常に書いて示してやることが重要なのだ。

また、五十音表の行は、できるだけ次に入力する文字の傍に置けるよう工夫する。ヤ、ラ、ワの行はかなり離れることになるので、視線の移動が大きい。後の行に行くときはそれまでの行の部分を折って隠してやるなどの工夫が求められる。
iPad のような端末を使う時は、目的とされる行だけを表示できるので、便利かもしれない。ソフトを誰かが作ってくれればの話だが。

この方式でやってみたら「○○子(妻の名)に家のインシュリンと針を持ってこいと伝えて」という言葉を引きだすことが出来た。ずいぶん時間がかかったが、これを私が了解した時、次兄は顔をくしゃくしゃにして笑ってみせた。意思が通じたことがよほど嬉しかったのだろう。

ぐぐってみたが五十音表での意志疎通には多くの看護者が悩んでいる。上記のやりかたを一つの方法として覚えておかれると、いつか役に立つこともあるのではないかと思い、ここに記しておく。もちろん役に立つ日が来ないことが望ましいのだけれど。

(パソコンと連動させた五十音表もある。まばたきだけで入力できるソフトもあり、それで本を書いた脳梗塞患者もいるが、それは病状が安定してからのことである)

コメント
イイネ!(3) 霞 鈴木輝一郎 misaki
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コメント

ぐらんぴ 2011年07月08日 03:05


今では姪がこの方法に熟達し、父親と五十文字ぐらいの文言をひきだすことに成功している。死後してほしいことなどだが、本人はそうやって「伝えておかねばならぬ意思」を伝えられたことで、かなり情緒的に安定してきたように思われる。
私が帰京する直前 iPad を借りられたので、これでもう少しスムーズに出来るかと思ったが、そういうソフトがまだ見つからない。



tag 2011年07月08日 03:06


僕は母を13年前に脳梗塞で亡くしており、いろいろ無念な思いをしたので興味深く読んでおります
お忙しい中のご看病たいへんだとは思いますが、弟様のご快癒をお祈りしています


長田一美 2011年07月08日 04:24


何かの時のため 覚えておきます。
思うことが伝えられないのは辛いですから。
一番は そうして時間をかけても 言いたいことをわかろうとしてくれる人の存在が嬉しいのだと思います。


のぶ(nob) 2011年07月08日 06:31


まさか、このお話が役に立つとは。
ぐらんぴはご存じですが、私の兄も4週間前から脳梗塞でほぼ同じ症状なのです(うなづきができませんが)。
iPadは使えそうな気がしますが、ソフトがなければ難しいですね。画用紙をあなどってはいけない。
>今まで選んで確定した文字列を常に示しておく。

これはすばらしいアドバイスですね。携帯の「予想変換」みたい。

霞 2011年07月08日 09:21


ああ、すばらしい発見ですね。
幸せな、お兄様。
この方法は、医療テキストにするべきです。
どのくらいの人々が、意志が疎通できずに悩んでいることか…。
「mixi」の方の中に、医師から宣言されてしまった意識不明になられた恋人を長期間さすりつづけて、ついに意識も、手足なども回復させた方がおられます。
「結婚します」と、ご報告がありました。


ぐらんぴ 2011年07月09日 05:59


>tagさん お励ましありがとうございます。そうですか母上が脳梗塞に……。姿が変わり果ててしまうので、辛い病気ですね。ご冥福を。
>長田一美さん お励ましありがとうございます。言葉がなんとか発せられれば、救いはあるのですがね……。そのうち脳で考えてることを読み取って音声にしてくれる機械が出来ればと思います。
>のぶ(nob)さん お兄上は頷くことも出来ないですか。私の兄よりも重症ですね。そういう状態でもアルファベットキーを用いてPCで文章を書き、本を書いた人もいるのですね。それには意欲が必要なのですが、私の兄はもはやその意欲はありません。お兄上の強い意思によるご回復を祈ります(不可能ではないという医師もいます)。
>霞さま そういう例もあるのですね。梗塞部をバイパスする血管が出来るので、その間を持ちこたえれば回復が望めると医師も言っていますが、たぶん若い人には有効なのだと思います。意識が失われたようでも実は「生きて」いる場合があるので、声をかける、撫でたり揉んだりしてあげる、ということを常に行なうのは有効な治療法らしいです。看護する側は大変ですが。私と次兄は、というか長兄との間もそうですが、ふだんあまり会話をする関係ではなかったので、ついていても何と声をかけていいのか分らないのですね。男きょうだいというのはそんなものですが。


鈴木輝一郎 2011年07月09日 18:07


なにか、ケータイの予測変換とかGoogle日本語入力の予測変換のたぐいがけっこう役立ちそうな感じはしますね。
いい方法を教えていただきました。自分のとき用に参考にさせていただきます。
鈴木輝一郎 by desktop

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