ぐらんぴ日記

mixi上で「ぐらんぴ」が書いている日記の引っ越し版です。文字サイズ変更できます。

敗荷の季節  2010年11月10日07:43

敗荷1

敗荷2

敗荷」と聞くと、荷風ファンとしてはギクという思いに駆られるんですよ。
「敗荷」は季語です。えーと、秋の終わりあたりね。今頃使われる季語でしょう。

「はいか」と音で読んでもいいし、「やれはす」と熟字訓で読んでもいいです。
蕪村の句に、

さればこそ賢者は富まず敗荷

とあるのは「やれはちす

獺(かわうそ)の提灯遠き敗荷かな  零余子

こちらは「はいか

ちなみに「破れ蓮」とかいて「やれはす」。つまり敗荷になります。
これでお分かりのように、「荷」は荷物の「荷」ではなく、植物の「蓮」なんです。蓮の別字と言っていい。

敗荷とはつまり、夏はあんなにみずみずしく奔放に拡げていた蓮の葉が黄褐色に枯れてボロボロに破れ水面に打ち伏すような敗残のさまをさします。

荷風ファンがなぜ「敗荷」と聞いてギクとするかというと、荷風の死後、石川淳(作家、あのいしかわじゅん氏とは違います)が『敗荷落日(はいか・らくじつ)』という文を発表したからですね。

石川淳は熱烈な荷風信奉者だったけれど、戦後の荷風をまったく評価できなかった。文学者として許せないナマケモノみたいな晩年を送りボケ老人のように死んだ。荷風追悼を特集した『新潮』に書いた一文は、もう晩年の荷風をさんざん罵りまくったあげくに、

日はすでに落ちた。もはや太陽のエネルギーと縁が切れたところの、一箇の怠惰な老人の末路のごときには、わたしは一燈をささげるゆかりもない。

――と、こう結んでるんですね。「ない」のあとに「!!!!!」というのがイヤというほど感じられる文章ではないですか!(笑)

まあ、言ってることに大きな誤認はないし、そのとおりと言っちゃそのとおりなんで、荷風ファンとしては怒りたいけど怒れない。「なにもそんなひどいことを言わなくても……」と、ぼやくしかないわけです。

最近は「晩年の荷風のボケぶりも本人の芸のうち。そのあたりを読み取れない石川淳は野暮な男よ」という論が高まってますがね、それにしたって負け惜しみだ。
というわけで「敗荷」という言葉はどうもいまいましい言葉なんですな。(笑)

ここまでは先日の朝日新聞、高橋睦郎の連載エッセイ『花をひろう』からの受け売りですけどね、ちょっと見逃せないことが書いてあったのですよ。

従来、永井荘吉が「荷風」という雅号を選んだのは、15の春(青春ですよ)、瘰癧(るいれき、すごい字だ)を患って入院手術を受けた時、病院の看護婦に惚れてしまったことによるとされています。
その看護婦の名が「蓮」。「れん」。ふつう「おれん」と呼ばれるでしょう。
蓮の別字が「荷」。蓮は池や沼の水面に茂りますから、夏、白い花を咲かせた池の蓮の上をわたる風、という意味で「荷風」。少年荷風のロマンチックな思慕が感じられるよいエピソードではないですか。

高橋睦郎はそのエピソードには触れず、由来は、「たぶん古代中国の南北朝・梁(りょう)の詩人、庾信(ゆしん)の『報和山池詩』だろうと言います。

荷風 浴鳥を驚かし
橋影 行魚を聚(あつ)む


いずれにしろ、「蓮のうえを吹きわたる風」ってことですね。寡聞にして私は、この漢詩については知りませんでした。自分へのメモとして書き置きましょう。

==========
コメント

ぐらんぴ2010年11月10日 08:03
web上では庾信の『報和山池詩』を索くことができませんでした。かわりに、

宋の時代、張鎡という詩人の『如夢令』という詩(宋詞ですかね)が見つかりました。これにも「荷風」が詠み込まれています。

野菊亭亭爭秀,伴露荷風柳,淺碧小開花,誰摘誰看誰嗅,知否,知否,不入東籬杯酒。

歌謡の詞ですね。

ぐらんぴ2010年11月10日 08:14
ちなみに、荷風の父、永井久一郎は文部官僚から銀行家になった人物ですが漢詩について造詣が深く、禾原(かげん)と号した漢詩人でした。
それゆえ、荷風も山のような漢詩の本に囲まれて育ったでしょうから、その山のなかから「荷風」という文字の入った詩を見つけることはたやすかったかもしれません。

ぐらんぴ2010年11月10日 11:16
Googleでひいてみたら「お蓮」を「オハス」と読み、それは「オハス」という植物のことだとしているサイトがあって驚倒した。「オハス」などという植物がどこにあるのだ。
だいたい、その頃の女性の名前は一文字である。「蓮」。これを他人が呼ぶと「お蓮」である、呼びつけは「お蓮」、友人姉妹は「お蓮ちゃん」、他人行儀になれ「お蓮さま」。本人は誰かに名前を訊かれれば「れん、と申します」と言ったであろう。どこの世に「はす、と申します」という子がいただろうか。「そうか、おまえは蓮っ葉な女か」とからかわれたことであろう。ううむ、基本的なことを分かってないやつが荷風を語るな。うがが。

ぐらんぴ2010年11月10日 18:03
少年荷風が患った「瘰癧」(るいれき)という病気について記しておきます。これは結核菌がリンパ腺に入り、首のところで腫瘍となったものをさすようです。結核生頚部リンパ腫ともいいます。一カ所が腫れるんじゃなく数珠つなぎに腫れるらしい。
ということは、少年時代、荷風は結核菌に冒されていたということでね。
ちなみに入院したの下谷の東京帝国大付属第二病院。お蓮という看護婦はそこで青白い顔をしたおぼっちゃんの世話をしてくれました。その甲斐甲斐しさに荘吉少年はボーッとなってしまったんですね。

ぐらんぴ2010年11月11日 03:39
もう誰も読まんだろうけど、ボイスにも書いておいたことを。
「荷」と言う字はオハスと言う植物を表す字の一つだ。←なんてトンデモなことを書いてる人間のブログ。誤りを指摘してやりたいがダイレクトにメッセージを送る方法がない。こいつの読者になるというのも気色悪いしなあ。http://bit.ly/9d9gGk

万里2010年11月11日 22:24
>ぐらんぴ へ

>>誤りを指摘してやりたいがダイレクトにメッセージを送る方法がない。

この「カロリナ」さんは、コメントを受け付けていますから、コメントに匿名で投稿したら如何でしょうか?

ぐらんぴ は、個人的なブログは持ってないようだから、トラックバックを自分の公式ブログからやったら、相手に自分が物書きだと判ってしまうけど、コメントだったら、別に身分はバレないのでわ?

別段、(たぶん)年若い人の間違いを年長者が正すのは、悪いことだとも思えませんし、放っておくと、二次、三次の間違い(つまり、これを読んで、そうだと思いこむバカが増殖する(笑))も防止できますし。

ダンチョネ亭とか称して(^^;)、「えーと、些末なことですが、これはですね~」と「正しい」ことを普通の文章で穏やかに書いたら、相手も、それほど反撥しないのでわ。ブログの主旨そのものを否定するようなコメントなら別ですが、いわば、枝葉の部分ですからねぇ。

もっとも、出典は明確で入手しやすいモノが必要ですね。
ネットでも、Wikipedia程度でないと説得力がないが、当のWikipediaに、

>>帝国大学第二病院に入院中に恋心を寄せた看護婦の名「お蓮」に因み
>>「荷風」の雅号を用いたのもこのころである。

――と書いてある辺りを読んで、「お蓮」を「オハス」と読んだんぢゃないか、ってな気がするから(笑)、それを引用しても、バカに屋上屋を架すよーなもんかも(爆)。

「永井荷風 筆名の由来」とかで検索しても、「お蓮」に因む、とは書いてあっても、たいていのサイトで、その「訓み」までは記してない(つか、記すまでもないと判断した?)。
だから、第三者が、この誤解を解くのは、かなり面倒かもなぁ(笑)。

――と、ここまで書いて、あらためて検索し直してみました。
「永井荷風 筆名の由来 おはす」で検索した結果――、

「文豪荷風の筆名の由来」として、下記サイトが最上段にヒット。
(実際には、「間違った訓み」を検索するつもりだったが、意に反して、「正しい訓み」のサイトがヒットしてしまった、サーチャーには、よくある一例(^^;))

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/100705/acd1007050828001-n1.htm

「病床にあって壮吉は彼の看護婦であったお蓮(れん)という女をはじめて思慕し、後年文学に志を立てるに及んで、壮吉は永井の姓と調和させ、またお蓮の名に因(ちな)んで雅号を荷風と名づけたというのである。荷というのは蓮(はす)のことだからである」(佐藤春夫『小説永井荷風伝』)

――この引用ならば、元の「本」まで明記してあり、「訓み」もキチンとしているから、いーんぢゃないかしらん。

まぁ、放置プレイで、放っておく、って手もありますけどねー。

ネットで、他人の間違いを指摘して、逆恨み買ってもイヤだしなぁ(笑)。
(いや、まぁ、これはネットでなく、リアルでも同じか(^^;ゞ)

万里2010年11月11日 22:53
付記:

念のために、この「カロリナ」さんのプロフィールを見てみたら――、

http://www.blogger.com/profile/16179219723314141633

うわぁ。女性ってのも意外だったが、日本人ぢゃないぢゃんよ(*_*;)!

「私は23歳で、生まれつき小さい、ワルシャワの近くにあるヲウォミンという町に住んでいます。(中略)
私は長い間日本伝統的な文化に興味があって4年前ワルシャワ大学の日本学科に入学しました。もう五年生になって、今卒業論文を書く事は一番心がけています。文学を通じて文化が分かれるようになりたいと思って、文学のゼミを選びました。作家の中で永井荷風の伝記は面白いと思って荷風に書かれた小説を英語で読んでしまいました。彼は女が非常に好きだって、様々な著書で女性をきれいに写しました。そのために私は荷風に描かれた女のイメージに集中してジェンダーについて研究することにしました。それに、一番有名な、“腕比べ”と言う小説をポーランド語に翻訳しようとしています。」

――すげー、マジメぢゃん。
それに、この経歴が(ツリぢゃなく)ホントだったら、まぁ、「お蓮」を「オハス」と誤読したということも、まぁ許容範囲ではないかしら。
残念ながら、Wikipedia の永井荷風の項目の、ポーリッシュ版は無いが、マジャール語は読めないから仕方がないとして、英仏独版で、筆名の由来まで詳述しているものは見当たらなかった(と思うが、仏独に関しては、ちと読解力がアヤシイ(笑))。

カロリナちゃんが、どこで「お蓮」のエピソードを読んだか不明ですが、日本語の文献で、訓みがなかったとしたら、それはそれで、凄いことだと思う(少なくとも、「蓮」を「HASU」と訓むことを知ってはいたわけだから)。

これを、訂正してあげるのは、彼女の日本文化への思いに沿うものだ、と思われますし、ここは、ぜひ、日波文化交流のために、お説教ではなく、遠くワルシャワへと、荷風をともに愛する同士としての教示を一手、いかがでしょう>ぐらんぴ(笑)?

ぐらんぴ2010年11月11日 23:45
>万里さん
そ、そ、そんな人でしたか。(*_*;)
それじゃ「オハス」としちゃう可能性もあるかな。
じゃあ、ちょっと連絡とってみましょうかね。
いろいろ調べていただいてありがとうございます。
m(__)m

ぐらんぴ2010年11月12日 00:45
うわあ、コメントが送れないんですよう。(;_;)
コメントを送るためにはプロフィールを選べ、とあって、Googleアカウントなど何なのと言ってるんですが、私はたぶんどれも縁がない。
どうすればいいんでしょうねえ。(;_;)


万里2010年11月12日 00:57
>ぐらんぴ へ

いえいえ、どういたしまして。

ただ、もちろん、このプロフが虚構でなかったとしたらの話ですが(笑)。
でも、ブログの文章、読んでいて、全然、異和感なかったもんなぁ。
本当に、23歳のワルシャワ大学生だったら、スゴイ語学力ですよねー。

他のページに、「卑語表」などが和英波対訳で載っていたりするから、たぶん、ツリではなく、本当なんでしょう。
(ただし、「遊郭」を誰か英訳の際「red right district(赤線)」と訳したらしく、まぁ、それに対応するポーリッシュは、なんだか判らないんだけど、これは、すこーしだけ違ってるんぢゃないか、ってな気はしたが(笑)、まぁ、荷風が対象とした地域を云うんだったら、文脈的には、当たっているのかな)

しかしながら、いくらGoogle が提供してる世界標準の「ブロガー」だとしても、ユニコードは偉大だなぁ、というか。地球の裏側あたりに住んでて、たぶん、一度も日本の土を踏んだことがなくっても、ここまで書けるんだ。凄げーなー。
あぁ、インターネットに国境がない、というのは、ホンマやわぁ(笑)。

つーか、逆に、日本人で、外語大のポーランド専攻の院生が、これだけのポーリッシュを書けるか、否、英文科の学生が英語ででも、完璧に近い外語でのブログを書く、となったら、それは、かなり、ハードル高いんちゃうんかいな、と思いますもんね。

理数と語学には、徹底的に暗いσ(^^)としては、ため息もんですよー。

とまれ、プロフの文章がマジなら、永井荷風は、死後半世紀を経て、しかも、離れて遠き異郷の地においても、熱烈な若い愛好者に恵まれた、幸福な作家さんだ、ということになるのかなぁ。

万里2010年11月12日 01:20
>ぐらんぴ へ

>>うわあ、コメントが送れないんですよう。(;_;)

おっとっと(笑)。
コメント書いてる間に進捗(つか、膠着)が(^^;)。
そうか、ブロガーは、そうやって、スパムコメントなどを防止してるんですね(<匿名ぢゃ、出来ないように)。

えーっと――、
Google アカウントは、Google のG-mail を取れば、自動的に取得できますので、捨てメアドでも何でもいいから、それを使って、アカウントが取れます。

ちなみに、G-mail は基本的にWebメールですから、メールサイトで開かなければ送受信できない建前ですが、Thunderbird での送受信が可能です。SPAM 対策では世界一だし、他のメアドの転送機能などもあり、1GBくらい容量を提供しているので、大学などでもユーザは多いです。うちの大学は、一昨年まであった大学のメール鯖を維持できなくなり、新入生には、G-mail を取得して、それをPCメールや携帯メールで見られるよう、方法を指導してます(笑)。

σ(^^)は、Windows 版のThunderbird を使ってますけど、機能はMac版でも同じだと思います。
でも、アカウント取るだけなら、別に、G-mail のメアドは必要ではないし、この場合、アカだけ取って、それを入力したら、すんなりコメントが付けられるような気がしますが。。。

まぁ、これから先は、ちょいと当方が、代理で、というわけにはいかないんで、自己責任でお願いします(笑)。

まず、ネットで、「google アカウント」と検索すれば、たぶん下記のサイトがヒットしますので――、

https://www.google.com/accounts/

そこで、右上のログイン画面の真下にある――、

「Google アカウントをお持ちでない場合
     アカウントを作成」

――という箇所をクリックして、そこで、捨てメアドのアカやパスワード、認証コードなどを入力し、アカウント作成を押下すれば、すぐにそのメアド宛てにG-mail のアカウントが届くはずです。

他のWorldPress やType Pad などは、海外製のブログですから、そこのアカを取るってのは、とても推奨できません(^^;)。
だから、やっぱり、Google のアカが一番、手っ取り早いでしょう。

カロリナちゃんに、どうぞ、よろしく(笑)。




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